「愛してるよ、ひかり…」

「私も……」



雅樹君の腕の中で、熱い口付けを交わす。
最初の時は、シュウへの罪悪感のようなものであんなに苦しかったのに、今の私はもうそんなものもあんまり感じない。



「あぁ、どうしよう。
僕、最近、ひかりのことが好きでたまらないんだ。
好きで好きで、毎日頭からひかりのことが離れない!」

雅樹君はそう言って、私の身体を抱き締めた。



「もうっ、雅樹君!苦しいよ~!」

「やだ!離さない!」

「苦しいって~!」

「……マジで、シュウさんに返したくなくなってきちゃった…」

「……え?」



その一言で、今までの浮かれた気持ちが吹き飛んだ。



一線を越えてしまったのは、かれこれ一ヶ月近く前のこと。
悩んだ末に、私は決断した。
雅樹君の言う通り、これは私とシュウがうまくいくための方法。
利用するみたいで雅樹君に悪い気はするけど、最初の動機は不純だったとはいえ、今は私も本気で雅樹君にひかれているのも事実だから全く愛がないってわけじゃない。
利用というよりは協力してもらうんだと自分に言い聞かせ、そして、ついに…

私はシュウと雅樹君だけしか知らないけど、やっぱり人によって違うんだってことがよくわかった。
身体もやり方も、雅樹君とシュウとではずいぶん違う。
初めて雅樹君と身体を重ねた時、私はわんわん泣いてしまって雅樹君を困らせた。
それは、やっぱりシュウを裏切ってしまったような罪悪感を感じたことと…
それから……思いがけず気持ち良くなってしまったから。
よく、からだの相性なんてことを聞くけど、もしかしたら、私はシュウとはそれが良くなかったんじゃないかって思えて、なんだかとても悲しくなった。
相性が良くないんじゃ、将来的にはやっぱり私はシュウに捨てられてしまうんじゃないかって思ったら、いたたまれない気持ちになって…

その日は、シュウと顔を合わせるのが辛過ぎて、体調が悪いふりをして私は部屋にひきこもった。
そんなこととも知らず、シュウは私のことを心配して何度も声をかけてくれて…その度に、私は胸の奥がズキズキと痛んだ。
本当のことを知ったら、シュウはどう思うだろう?
シュウも同じようなことをやってるんだからなんとも思わないんだろうか?
それとも、自分は良くても私がやったら怒る?



(……私と…別れる…?)



それだけはいや!
そうならないために、私はこんなことをしたんだから。
……そうだ…もっと慣れなきゃ…
あんなことはたいしたことじゃない。
誰だってやってることなんだから。

そう思えるようになれば、シュウの浮気もなんとも思わなくなる。
いつか、そうなれたら…今まで以上にシュウと仲良くやっていけるはず。