青木さんの顔が、なんだか驚いたような…今まで見たことのないようなおかしな表情に変わった。



(わ、私…何か変なこと言っちゃった…!?)



「ご、ごめ……」

いつもの癖で、ついお詫びの言葉を言いかけて、そこで私ははたと気付いた。
ついさっき、青木さんにその癖をやめるように言われたばかりだということを…


焦った私は、咄嗟にお茶に手を伸ばし、飲み込んだ途端に激しくむせた。



「だ、大丈夫ですか、野々村さん!」

「は…は、はひ…」

青木さんは、咳き込む私の背中を叩いたりさすったりしてくれた。



「も、もう大丈夫…ですから…
ご、ごめ……」

またごめんなさいを言いそうになった私は、慌てて両手を口にあてがった。



その仕草の意味することに気付いたのか、青木さんの私の背中をさする手が不意に停まり、そして、次の瞬間、青木さんは声を上げて笑い始めた。



「の、野々村さんって…本当に面白い人ですね。」

青木さんはなんだかものすごく笑ってて…
私は恥ずかしかったのに、青木さんがあまりにも豪快に笑うからその笑いに釣られてつい同じように笑ってしまってた。



久し振りだ…
この家に、こんな笑い声が響いたのは…
こんなに笑ったのは本当にひさしぶり…雪が降ってた私の心の中に突然春がやって来て、ぱーっと花が咲いたような気分だった。
そんな風に笑えたのは、青木さんのおかげ。
嬉しい…
青木さんに出会えて…本当に良かった…!



そう想うと胸の奥が熱くなって来て、私の顔は一瞬にして泣き顔に変わってしまった。



「の、野々村さん!
今度はどうしたんです!?」

「……う、嬉しかったんです。
私……こんなに笑えたことがとても嬉しくて……
ご、ごめんなさい。」



(あ……!)



ついにごめんなさいを言ってしまった。
……でも、青木さんはそのことを少しも咎めない。



「……俺も嬉しいですよ。」



(えっ!?)



青木さんがどういう意味でそう言われたのかはわからなかったけど、私はその一言でますます胸が熱くなった。