「野々村さん…まずはそんな風に謝ってばかりいることをおやめなさい。
あなたがそんな風だと、それはすべてあなたのお父様のせいだということになる。
お父様の育て方があなたをそんなに萎縮させたのだと。
亡くなった方にあなたはなおさら肩身の狭い想いをさせるおつもりですか?
それから、ご自分の意見を言えないっていうのもそうだ。
野々村さん…あなたが本当にご両親に対して罪悪感を感じていらっしゃるのなら、あなた自身を変えることを罪滅ぼしだと思って、真剣に取り組むべきだ。
あなたの話を聞いてしまった以上、見過ごすわけにはいきません。
俺もそれを手伝います。
あなたがそういう言動を見せる度に、俺が厳しく注意します。
良いですね!?」

「……青木さん…」

何を偉そうなことを言ってるんだ、俺は…
そう思ったが、もはや引っ込みが着かない。
俺は素知らぬ顔を決めこんで、食べかけの弁当に手を戻した。



「野々村さん、お茶をもういっぱいいただけますか?」

「は…はいっ!」

いつもと変わりない野々村さんの態度に俺は安堵した。
いや、内心では今言ったことに気を悪くしてるかもしれないが、とりあえずは受けいれてくれたようだ。
それにしても、昨日からの俺はどうかしてる。
いつもなら、こんなに他人のことに深入りするようなこともないものを…



(まぁ、考えてみればこのところいろいろあったからな。
俺も知らず知らずに神経が弱っていたってことなのかもしれないな。
理性よりも感情が勝ってるようだ。
……きっと、そのうち戻るだろう。
亜理紗のことが解決すれば…
……そういえば、今日はマイケルに電話してみなきゃいけないな。)



「はい、どうぞ。」

「あ…ありがとうございます。」

俺は、野々村さんの煎れたお茶を飲み、相変わらず何食わぬ顔をした。



「青木さん…ありがとうございます。
私……青木さんと出会えたこと…心から感謝しています。」

小さな声で発せられたその言葉に、俺は意外にも胸の鼓動が速くなるのを感じた。