「どうぞ。」

「ありがとうございます。」

温められた弁当とカップの味噌汁が俺の前に差し出され、野々村さんはお茶を煎れていた。



「……いただきます。」

何気なくテレビに目を移しながら、俺は弁当に箸を付けた。
野々村さんもお茶を煎れ終えると、座ってゆっくりと弁当を開いた。



「あ…あの、青木さん…」

「な、なんですか?!」

不意にかけられた声に、俺はごはんを詰まらせそうになり、慌ててお茶を流しこむ。



「あ…あの…昨夜は、えっと…」

「あ…それなら、俺の方こそ……」

なんとも気まずい雰囲気だった。
彼女も俺と同じくどこか照れ臭そうな様子だった。
無理もない…昨夜の俺達は、誰にも知られたくない秘密のようなものを洗いざらい打ち明けあったのだから。
でも、そのおかげで俺は今まで味わったことのないすっきりとした想いも感じていた。



「ほ、本当にごめんなさい!
わ、私…なんであんなことを話してしまったのか…」

「それだったら俺だって同じですよ。
……俺も、なんであんなこと話してしまったのか…本当にわからない。
でも、多分…俺はずっと誰かに話したかったんじゃないかと思うんです。
ずるいかもしれないけど、吐き出して楽になりたかったんじゃないかって…」

「わ……私もです!
私の場合は…懺悔というのか…
そういう意味合いもあると思います。
ご、ごめんなさい!
そんな重いこと、青木さんに打ち明けてしまって……」

何度も頭を下げる野々村さんを見ていると、今までとは違い、俺はなんとも痛ましい気分になった。



「野々村さん…あなたは昨夜おっしゃった。
ご両親はあなたが殺したようなものだと…
あの言葉は真実ですか?」

「え……」

追い詰めるような俺の言葉に、野々村さんは一瞬にして顔色を変えた。



「は…はい、本当です。」

そして、消え入りそうな声でそう答えた。



「だったら、あなたはその罪を償わなければならない。」

「……そ、そうですね…」

うな垂れる野々村さんに、俺はなおも言葉を続ける。