「……私はまだ幼い頃からこの能力を持っていたようです。
最初は母が読み聞かせる絵本の続きを話したりするだけで、その時は母もただの空想好きな子供だと、その程度にしか感じていなかったようです。
私にももちろん自覚はありませんでした。
……自分が他人と違う能力を持ってることを自覚したのは、小学生の終わり頃だったように思います。
当時流行っていた漫画の続きが私にはわかったんです。
私は、家では漫画を読む事を禁止されてましたから、たまに行く散髪屋さん等でこっそり読んだ漫画です。
ある日、私はそのことを思いきって母に話しました。
母も薄々感じてはいたようです。
そのことは絶対他人には知られないようにするように、父にも絶対に言ってはいけないと母は言いました。
そんな事言われなくても、父になんて言えるはずなかった。
……だって、私が父と話す時はいつもお小言だけだったんですから。
おまえは顔も美しくないし特に秀でたものも何もない。
だから、一生懸命勉強するしかないんだと…そんなことを言われるばかりでした。
私は言われた通り、真面目に勉強しましたが、それでも一番にはなれなかった。
どんなに頑張ってもいつも三番か四番目。
父はそれでますます私に失望していったんです。」

「ま、待って下さい。
野々村さん、あなたは……そりゃあ、正直言って特別美人だとは言いませんが、卑下するような容姿ではないと思いますよ。
スタイルだって悪くないし、もう少しおしゃれをすればきっと見違えるように綺麗になります。
素が悪いわけじゃないんですから。
……それに、三番、四番だったら十分に素晴らしい成績じゃないですか。」

私は青木さんのその言葉に首を振った。



「いいえ…父は一番じゃないと認めないんです。
それに……私も若い頃はこんなに酷い身なりをしてたわけじゃないんですよ。
派手な格好こそしたことはありませんが、それなりに流行りの服を着て流行りの髪形をして…
こんな年になってもまだ独身ですが、男性とおつきあいをしたことだって何人もあるんですよ。」

「もちろんですよ。
あなたに恋愛経験がなかっただろうなんて、俺は思ってませんよ。
それに、俺だって独身じゃないですか。
同じようなもんですよ。」

青木さんは、私に気を遣い少し無理した笑顔を浮かべた。



(青木さんは優しい……)



また胸がいっぱいになった。
その気遣いが嬉しかったのと、当時のことが思い出されたことで、私の感情はさらに暴走した。