続・赤い流れ星

「そ、そ、そんなこと…
あ、青木さんはいいかげんなんかじゃないと思います。
た、多分、男の人ならよくあることじゃないかって……
そ、それに、青木さんのお父さんも…きっと、そんなに悪い人じゃないと思います。
ちゃんと出来なかったのはもちろんよくないことだけど…でも、まだ十代じゃ仕方なかったのかも……」

「野々村さん……」



(はっ…私…また余計なことを……!)

青木さんを元気付けたいという思いが先走り、私はまたおかしなことを言ってしまったことに気付いて青ざめた。



「ご、ごめんなさい!
本当にごめんなさい!
私、また……」

「野々村さん……また……
俺はそんな風に言ってもらえて、複雑だけどちょっと嬉しかったですよ。
……俺は子供の頃から父親の悪口ばかりを聞いてきました。
だから、俺もずっとそう思って父親を憎んでた。
でも……年を取るに連れてなんとなくそんな気持ちに変化が出て来たんです。
まだ18や19の時に、突然、子供が生まれても、きっと親の自覚なんて生まれない。
男は特にそうかもしれませんね。
それでも、長く一緒にいればじょじょにそういう気持ちも芽生えたかもしれないけど、母は結論を出すのが早かったから…
……でも、訊いたことがあるんです。
父は俺のことをよく可愛がってたって。
うまく出来ないなりに、父は俺の面倒をみようとしていたようです。」

「そうだったんですか…」



ほっとした。
青木さんの顔にまたいつもの笑顔が浮かんでいたから。
でも、青木さんにそんな家庭の事情があったなんて知らなかった。
青木さんはいつも明るい印象だったから、生い立ちに複雑な事情があるなんて考えたこともなかった。



(私には特別な能力があるのに、そんなこと全然感じなかった…なんでだろ?
あ……だったら、妹さんは…)



「……美幸は父親違いの妹なんですよ。」

「えっっ!?」

「……そんなに驚きましたか?」

「い…いえ、そうじゃないんです。」



まるで、私の心の中を読まれたかのようなタイミングに、私は思わず大きな声を出してしまってた。



「そういえば、野々村さん、ご兄弟は?」

「え……い、いません。」

「そうですか…それは、お寂しいですね。」



私は、何と返して良いのか思いつかず、ただ黙って頷いた。