「俺に何が出来るかはわかりません。
……今だって、こんなに野々村さんに迷惑をかけてるんですから、本当に頼りないと思いますが、俺が出来ることならなんでもしますから…
無理になんとかしようと考えなくて良いんですよ。
そうだ…このごたごたが片付いたら、どこかに旅行をしてみるのも良いかもしれませんよ。
綺麗な景色を見ておいしいものを食べて…そうやってリフレッシュするだけで良いんです。
そんなことを繰り返しているうちに、少しずつ心の元気も取り戻せるんじゃないかな?
……って、俺なんかが旅行に誘ったりしたらまたスキャンダルになっちゃうかな…」

そう言いながら、青木さんは困ったような顔をして苦笑した。



「い…いえ。
相手が私みたいなおばさんだったら、誰もそんなこと…」

「野々村さん…そんな風に言わないで下さいよ。
野々村さんがおばさんだったら、俺だっておじさんじゃないですか。」

「そ、そんな!
野々村さんは年齢よりもお若く見えるし、とても素敵で格好良くて…
だから、亜理紗さんだって…
私なんかとは全然違います。」

私がそう言うと、青木さんはなんだかとても寂しそうな顔をした。



「野々村さん…亜理紗はなぜ俺なんかに執着するんでしょう?
俺にはそれがどうしてもわからない。
あいつは、ただの遊びのつもりで俺を誘ったんだと思ってた。
なのに、あんなことまでするなんて、俺にはまるで理解出来ないんです。」

青木さんのその口調は謙遜でもなんでもなく、本心からそう思われているような口ぶりだった。



「それは……
さっきも言ったように、青木さんは見た目にも格好良いし、仕事も順調だし、女性なら誰もが憧れるもんじゃないでしょうか?」

「でも、彼女の周りには格好良い男なんて山ほどいる。
それに、俺よりもアッシュやマイケルの方がずっと格好良いし、若いですよ。
なのにどうして…」



言われてみれば、確かにアッシュさんやマイケルさんはとても格好良い。
青木さんも背は高いけど、アッシュさん達はさらに高くてスタイルもセンスも抜群だ。
二人共明るいし、頭の良さも感じる。
だけど、私もアッシュさん達には特別な感情を感じる事はなかった。
どうしてだろう…?
改めて考えてみるととても不思議なことだけど…
私は、初めて会った時から青木さんだけが気になっていたような気がする。
その後、打ち合わせをしたり会ったりして青木さんのことを知るようになって…知れば知る程、気にかかる存在になっていったんだ…