(……バレた…)



私が、青木さんと亜理紗さんのことに大きなショックを受けたことを青木さんに気付かれてしまった…
つまり、それは私が青木さんのことを好きだということも見透かされてしまったということだ。
……恥ずかしい…
恥ずかしくて、今すぐここから消えてしまいたい…
だけど、消えることなんて出来る筈もなく…
半ばパニックになった私は、年甲斐もなくその場で泣き出してしまうという醜態を晒してしまった。
……でも、このまま泣き続けてるわけにもいかない。
私の気持ちが青木さんにとって迷惑な事はわかってる。
もちろん、受け止めてほしいとも思ってない。
だけど……ここまで来たら、正直に私の気持ちを話してしまって…そして素直に謝ろう…
これからは、青木さんに関わらないと約束すれば、青木さんもきっと許して下さると思う。

私は心を決め、懸命に息を整えた。



「……大丈夫ですか?」

その声と同時に、ハンカチが差し出された。
センスの良い紺色のハンカチだ。



「あ…あり…がとうご…ざいます。」

青木さんのハンカチを汚してしまうのは申し訳ないけど、きっと今の私は酷い顔になっていると思う。
話をするにも涙くらい拭いとかないと、あまりにも見苦しい。
私は少し気がひけながらも、ありがたくそのハンカチを使わせてもらった。
どことなく顔が突っ張る…
きっと、涙を拭いたくらいじゃどうにもならないくらい、今の私は酷い顔になってるんだろう。



(……そんなこと、たいした問題じゃないわ。
どうせ、私は元々綺麗でもなんでもないただのおばさんだもの…)



そうとでも開き直らなきゃ、とてもこれから話なんて出来ない。
こんな私が青木さんに憧れてたなんて言うだけでも不快だろうに、その上、こんな最悪の状態の時にだなんて……
……惨めだ。
でも……却ってこんな状況だからこそ、すっぱり青木さんのことを諦められる…



(どうか優しい言葉はかけないで下さい…)



罵ってくれれば良い。
思いっきり酷いことを言ってくれたら、きっと……私は青木さんのことを諦められるから…



「青木さん…実は……」

おずおずと顔を上げると、青木さんの瞳が真っ直ぐに私の顔をみつめていた。