【side夏美】

「祐ー!頑張ってーーーー‼」
「藤堂先輩ー!頑張ってくださーい!」

朝からみんなの声援がすごい。

3年生の先輩から1週間前この中学校に入学してきたばかりの1年生まで。


おそらくこの学校の全ての女子生徒がこのグランドに集まっているんじゃないかって思うほど大勢の女子生徒がいる。

もちろんみんなのお目当てはサッカー部の朝練中のあの人。


「夏美ー!藤堂先輩見えたー?」

「うん!やっぱりかっこいいーーー!」

そう。みんなのお目当ては2年生の藤堂 祐先輩。

外見はもちろんよし!頭もよし!スポーツもできる、まさに完璧な人。

そして私の好きな人でもある。

もちろんライバルも多いし、諦めなければいけないのは自分でもわかってる。


でも、簡単にあきらめられたらこんな朝早くに学校へ来て朝練の見学なんかしない。

「夏美!朝練終わったみたいだよ!」

「あっ!ほんとだ!」

朝練が終わった瞬間、多くの女子が藤堂先輩に話しかけようと藤堂先輩のもとに向かう。

「祐ー!お疲れ様!はい、タオル♡」

「先輩、毎日ありがとうございます」

「いいのいいのこれくらい~♡祐が喜んでくれるから毎日はりきっちゃう♡」

「あ、じゃあ先生に呼ばれてるんで俺、もう行きますね」

「えーーー!もう行っちゃうの~」

「すみません、じゃあ」

「うん…ばいばい♡」


先輩行っちゃった…
また今日も話しかけられなかったな…

「今日も話しかけられなかったね…でもまた明日も朝練見ようね!夏美!」

「友紀ちゃん…ありがとーーー!」

「あぁ、もう夏美かわいすぎ!うちに嫁にもらいたいくらい!」

「それは友紀ちゃんでしょ!」

友紀ちゃんは私の親友。
美人で彼氏もいてとっても優しい。

「夏美!チャイム鳴るよ~!急ご!」

「うん!待って友紀ちゃぁぁぁん!」








「はい今日はここまで!部活がある人は早く部活に行くんだぞー」

「「「はーーーい」」」

「は~。やっと終わった~!」

「…………。」

「あれ?夏美どうしたの?」

「ちょっと頭痛くて…保健室行ってくるね!友紀ちゃん、部活頑張って!」

「うん…でも大丈夫?私も保健室行こうか?」

「ううん、大丈夫!」



「あれっ⁉先生いないや…ベットで寝て待ってたらすぐ来るよね」

「三月先輩、お待たせしました」

「あっ!祐♡大丈夫だよ~♡私も今、来たところだから」

藤堂先輩⁉
あともう1人。今日、藤堂先輩にタオル渡してた三月先輩だ。


2人は何やってるんだろ?
カーテンしてるから私に気づいてないみたいだしちょっとだけなら見てもいいよね…


「祐、今日も他の女の子に優しくしてたね…ま、そこが祐のいいところなんだけどね…」

「もしかして妬いてるんですか?」

「だって祐が他の女の子に優しくするから…んんっ…んっ…」

2人は、キスしてた。



藤堂先輩、彼女いたんだ…
知らなかった…

私はショックで涙があふれてきた。


「じゃ、先輩…俺また部活あるんで…」

「あっ、待って!私も一緒に行く!」



藤堂先輩と三月先輩は行ってしまった。

私はショックで涙がとまらなくなってしまった。

いつの間にか頭が痛いのも忘れ、ただひたすら泣いていた…

泣いても藤堂先輩に彼女がいるという事実には変わりないのに。

ただ悲しかった…


私の人生初めての恋は終わった…





【side祐】
放課後、三月先輩に呼ばれて保健室へ向かった。


三月先輩は俺の一応…彼女。

っても2週間前に三月先輩に告られたときに断りきれなかったからOKした。


俺は、告白を断ったことなんて1度もない。


頑張って告白してきてくれたその人の気持ちを無駄にするみたいだからできなかった。


だから来るもの拒まずで誰でも告白してくれたらOKした。



好きな人?
俺は女を好きになったことなんてない。


たぶんこの先も女を好きになることなんてないんだろうなと思っていた。



そう、あのときまでは。


保健室に着くと、三月先輩が保健室のベットの上に座って待っていた。


先輩が、横に座ってと合図したから先輩の横に座った。



先輩は俺にキスを迫ってきた。



俺は先輩にキスをした。





しばらくたって唇を離した。


ふと時計を見るともう部活に行く時間がとっくに過ぎていた。



早く行かないと。
先生にまた呼び出される。


焦った俺は先輩に別れを告げ部活へ行こうとした。


先輩は俺のあとを着いてきた。

そのとき俺は誰かの泣き声が聞こえた気がしたが、とくに気にならなかった。



【side夏美】

私は1人、保健室のベットの上で泣いていた。


今あったことは嘘だって。
先輩には彼女はいないって。


そう信じたかった。

だけどこれは事実で。

自分でもびっくりするくらい涙がこぼれてきた。



「夏美ー!いるー?」

友紀ちゃんだ。友紀ちゃん、私を心配して来てくれた。

「夏美ー?いたら返事して~」

「友紀ちゃんっ」

「おっ!夏美…ってどうしたのその顔」

「あのね…」

私は友紀ちゃんに涙の理由を話した。


友紀ちゃんは私が話し終わるまで何も言わずに静かに聞いてくれた。

私が話し終わると友紀ちゃんが口を開いた。

「そっか…そんなことがあったんだね…夏美、つらかったね…」

「うん…」

「でも、夏美はそれで藤堂先輩を諦めるの?」

「諦めたくない…」

「だったら諦めなくていいんじゃない?だいたい夏美、先輩のこと諦めきれないでしょ?」

「そっそうなんだけどさ…」

「だから諦めなくていいのっ!夏美はいつもみたい藤堂先輩を好きでいればそれでいいのよ」

「そうだよね!」

「うん!さ、顔洗って!サッカー部見に行こ!」

「うん!ありがとう友紀ちゃん!」





「祐ー!ファイトー!」

「キャー!藤堂先輩こっち見た♡」



「あいかわらずすごい人気ね~!」

「だって先輩かっこいいもん!」

「夏美、本当に藤堂先輩大好きだよね。告白すればいいのに」

「えっっ!そんなのムリムリ!だってまだ話したこともないんだよ?」

「そりゃそうだけどさー。夏美見たら先輩も好きになるって」

「そんなこと絶対ないよ…」


「わりー!そこの1年生!ボール取ってくれる?」

いいなー!藤堂先輩に話しかけられてるし…


私の所にも来ないかな…藤堂先輩が蹴ったボール。

「おーい!聞こえてるか~?ボール取ってくれない?」

そう言いながら先輩は私を見つめてる。

えっ⁉私ですか?

自分の足元を見ると、サッカーボールが転がっていた。

私は慌てて先輩の所に行くようにそのボールを蹴った。

すると、私の蹴ったボールは見事に先輩の足元で止まった。

先輩は私を見つめながら

「サンキュー!」

って微笑みながら練習に戻って行った。


私にもそんな笑顔をしてくれるなんて、先輩は優しすぎます///

「夏美!良かったじゃん!」

「うん!近くで見る藤堂先輩、かっこ良かったねー!」

「夏美と藤堂先輩なかなかお似合いだったよー!横から見てるとカレカノだったし!」

「そんなことないよー‼でもすっごく嬉しかったな~!」

私は幸せで胸がいっぱいになった。

さっきのショックなど全て忘れ、ただ幸せを感じていた。





「お疲れ様でした~!」

そんな1年生のサッカー部の声が聞こえる。


「夏美!部活も終わったみたいだし帰ろっか!」

「うん!あっ‼教室に体操服忘れた‼お願い友紀ちゃん!一緒に取りに来て~!」

「夏美ってば~!しかたないな~」

私は友紀ちゃんと並んで歩きだした。