学校帰りの夕方、あのファミレスのドアをくぐる。一瞬、レジで会計をしていた夏美が、開いたドアに反応して「いらっしゃいませ」と口にしそうになったが、深空だと気付くと口をつぐみ、接客に集中する。そのあと、すぐに休憩室に入ってきた夏美は、深空を捕まえようとした。

 夏美は心配していたのだ。

 着替え終わって更衣室から出てきた深空は、夏美に一言だけ告げる。

「大丈夫だから。心配しないで」

 すると、夏美は何も言えなくなった。ただ、「そっか」とだけ答え、寂しそうな笑顔を浮かべていた。

 それからの深空は、体調の悪さを感じさせることのないような働きを見せる。体が疲れすぎて、食事は喉を通らなかったほどだ。それでも水分だけはしっかり摂って、もう頑張るしかなかった。