家にまっすぐ帰り、部屋に荷物を置いてトイレにこもる。取り扱い説明書通りに手順を踏むが、逸る気持ちに彼女の手は震えていた。

 反応が出るまで、数十秒。

("+"が陽性か…)

 そして検査薬の反応を、ゆっくりと見る……



 彼女は俯き、静かにドアを閉める。手には、使用済の検査薬。それには、はっきりと陽性を表す"+"が浮き出ていた。

 夏美の言葉が頭の中で巡る。

『つわり』



 この吐き気とだるさは、つわりなんだ…
 あたしのお腹には、赤ちゃんがいる……



「…誰の子だって言うのよ」

 彼女はたまらず、口に出していた。

 体温が上がる。

 深空は思わず自分の肩を抱き、その場に崩れ落ちた。どうしたらいいのかわからず、彼女はただ声に出して泣いた。もう、それしかできなかった。