なんだかその目は、さっきと違う目……?




「え? あ、うん」

 何となく彼の目線に違和感を感じたのだが、とりあえずそう返事をして手を振っていた。

「またその時、話そうぜ!」

 走りながら彼はその場を後にしたのと同時に誰からの着信からか確認する。

(伸夫…)

 深空は出るか出まいか迷っていると、着信音は途中で途切れてしまった。

(…もう関係ないじゃん)

 小さなため息をつき、彼女もその場から離れようとすると、さっき雄二が立
っていた所に何か落ちているのに気付いた。

(あれ…)

 彼女はその落とし物をそっと拾いあげる。それは随分と使い込まれている黒革の定期入れであった。

 無言で、そっと中を開いてみる。最初に彼女の目に入ったのは、写真入りの社員証だ。彼の名前が入っている。

(あらら…)

 おっちょこちょいだな、と思いながら、さらに何気なく裏に返してみる。

(!)

 そこにあったのは、いや、そこにいたのは…