ランチの大戦争もだいぶ落ち着き、客が段々と引けてきた時、深空は窓の外を見ると、日はだいぶ傾いていた。久しぶりに大忙しのランチタイムに入ると、さすがに深空は疲れていた。

(次のヤマはディナー…)

 ランチのような忙しさがまた来るのかと思うとげんなりしてしまうが、気を紛らわすには充分だった。

「深空、休憩入って」

 社員の吉井がディシャップの方から身を乗り出して指示をする。

「はーい」

 手に持ったダスターと丸いトレーを所定の位置に戻すと、お冷やを汲んだグラスを持って深空はスタスタとホールを後にする。

「深空ちゃん、従食は?」

 休憩室で座っていると、ウォーターステーションの方から夏美が聞いてくる。

「ん~…パス。食欲無くて」

 深空は氷の入ったお冷やを飲みながら言った。

「了解~」

 夏美は自分の従食(従業員の食事)だけをハンディターミナルで打ち込み、オーダーを通す。それからコーヒーをふたつ、カップに注いで休憩室に持ってきた。

「あ、ありがと」

 深空はコーヒーを受け取り、ブラックのままカップに口付けた。