一方、深空はひんやりとする夜空の下を落ち着かない様子で歩いていた。

(……)

 考えがまとまらない…

 はぁと大きなため息を吐き、彼女は月の出ている空を見上げた。

 (相手のペースにも飲まれるなんて… 最悪!)

 キャスケッドとストールで狭められた視界で見る空は本当に狭くて、息が詰まりそうになる。

 深空は首を激しく振り、首から口元までを覆っているストールに手をかけた。

(あたしには… ゲームなんだから…)

 それは何かを決意したかのような、ゆっくりとまた落ち着いた動きでストールを外す。口角についた殴られた跡には、赤紫の痣がはっきりと見えていた。深空はそのままの恰好で、大通りに向かう。そして適当に捕まえたタクシーに乗り込んでいったのだった。