「?」

 深空のおかしな様子に、雄二は眉間にシワを寄せた。

「…っ…」

 深空の唇が何か言おうと動く。しかしそれは言葉にはならず、相手には伝わらない。

「なんだって?」

 雄二は眉をひそめながら聞き返すが、深空はふと我に返ると慌てて体をお越し、ベッドを降りたのだ。

「ごめん。今日は帰る」

 彼女はそのまま、ソファに置いてある自分の服を着はじめる。

「え? なんで? …あ、じゃぁ送る」

 彼女の言動に面食らいながら、彼もベッドを降りて、手近にあるシャツを手に取った。しかし、深空はそれを制止した。

「大丈夫。その辺でタクシー拾うから」

 だいたい支度を済ませ、彼女は慌てて靴を履き、手を振りながらそそくさと雄二の部屋を去った。

「お、おいっ…!」

 雄二の呼び掛けも虚しく、閉まったドアの向こうからは、外階段を降りていく音が響いていた。

 状況がいまいち把握できず、呆然とその場に立ち尽くす、雄二。やっとできたことといえば、タバコに火を付けるくらいなものだった。