「…俺のどこがダメなんだよ?」

 肩を震わせ、搾り出すような声で伸夫は言う。

「…伸夫といても、もうドキドキしなくなったの。…って電話でも言ったでしょ」

 深空ははっきりと言った。

「それが訳わかんねぇんだよ」

「あたしに何を求めてた? 体? 愛? それとも母親のような安心感? 残念だけど、あたしには"無い物ねだり"をされてるとしか思えないの。それがもう嫌なのよ…」

 深空は溜息を吐きながら目を伏せた。

「俺にとってお前は、女神なんだよ…」

 伸夫はゆっくりと振り返ると、深空の頬に触れた。そのまま顔を近づけて、キスをする。

「…そんなふうにキスしても、もうあたしは何にも感じないよ。あたしは、あんたの女神にはなれない。なぜなら…」

 一瞬、頭の中に雄二の顔が浮かび、少しだけ口角が上がる。

「あたしはあんたではもう満足できないんだから…」

 彼女のその言葉に、目の前の男の顔が紅潮する。しかしそんなことに構わず、深空はベッドを下りると、服に袖を通しはじめた。