伸夫の激しい息遣いが、その部屋中に広がると、不快の塊となり深空の耳を掠めていく。

 彼の唇が、無理矢理深空の唇を塞ぐ。深空は足をバタつかせ、必死に抵抗した。

 それでも彼の暴走は止まらない。彼は深空の首筋に唇を押し付けて這わせている。しかし何にも感じないその行為に、深空はもはや抵抗をやめた。

 ただ黙って、伸夫の気の済むまでそのまま大人しく寝ている。彼を見る目はしっかりと開き、とても冷たかった。

 伸夫はふとその視線に気付き、深空の顔を見る。

「…抵抗、しないのか?」

「…しないから、気の済むまですれば。でもあたしのテンションは、このまま
だから。これが最後だから。我慢する」

 氷のような目で深空はそういい放つと、伸夫の体を押しのけ、服を脱ぎ出し
た。伸夫は明らかに動揺していた。

「…早くして」

 下着だけを付けた姿でベッドに横たわり、深空は伸夫を呼んだ。しかし、伸夫は彼女に背を向けたまま黙って、ベッドサイドに座っていた。