彼は、表通りから一本の路地に入った。

 その狭い路地に入ると、目の前の街は、まだ眠っていた。この時間ではほとんど人通りはなく、閑散としている。

(やだ…)

 伸夫がそこから一番近いホテルに入ろうとしていたのだ。深空は顔をしかめ、ホテルの入口で足を止める。

「何考えてんの?」

 思いっ切り手を振り上げ、伸夫の手を振り払った深空は、信じられないといった顔をして、伸夫の顔を見た。すると伸夫は深空の腕を強く掴んで、強引にホテルの入口に入り、適当に決めた部屋に向かっていったのだ。

 部屋のドアを乱暴に開けて、靴のままの彼女をベッドに放り投げた伸夫は、その勢いのまま、自分の身体で深空に覆いかぶさった。

(えっ)

 抵抗する間も与えられぬほどの勢いだった。