星の降る空、月明かりに照らされて、地面には伸びる影。

 「ただいま」

 彼がドアを開けた瞬間、「パパー!! おかえりなさい!」と、待ち兼ねていたかのように、飛び出す元気な娘。

「なんか、うまそうな匂いするなー」

 ネクタイを緩めながら、彼は娘の頭を優しく撫でる。

「ママがカレー作ってるんだよー」

 キッチンを指差しながら、娘は嬉しそうに元気に話す。

「そっか」

 愛おしそうに笑いながら、彼は娘を抱き抱えてキッチンを覗く――



 これが、欲しかった家族の形?

 深空には、想像も付かぬほどの幸せだった。

 今までに感じたことのない大切なもの。それは、目の前にある家族が本当に愛おしくて、掛け替えのないもので、二度と離れてはいけないということ。

 彼女の指には、懐かしい指輪がキラリと光っていた。