あの時—
 
 炎と煙の向こうから、ゆらゆらと揺れながら人影が近付いて来る。

 火花を散らしながら焼け落ちる物置の屋根…

 そして、下からは火に気付いた人々の叫ぶ声…

 にわかに辺りの空気がざわめき始める。

 すすで黒くなった雄二は、深空の目の前まで来たところで力尽きた。彼の胸の中には、苦しそうに目を閉じた深雪…

 彼女の肩に倒れ込む雄二を深空は受け止めると、彼に体重で押された拍子にその場に尻餅を付いてしまった。燃え盛る炎を前にして、彼女の思考は全く機能していなかった。