石段を昇り切ると、そこには下から見えた朱い鳥居が佇んでいた。雄二はその鳥居をくぐり、木が生い茂る林に足を踏み入れていた。街灯などはなく、真っ暗だった。かろうじて石が敷かれているが、暗いせいで足下はよく見えない。まるで獣道だ。

「大丈夫なの…?」

 あまりの暗さに、深空は思わず雄二に声をかける。腕時計を見ると、もう0時をとおに過ぎていた。

「お堂は、山の麓にあるんだ。少し山歩きになるが、たいした距離ではない」

 緩やかな石段を上る雄二は、震える深空の手を握った。

「…怖いか」

 軽く息を弾ませながら、彼は深空に言う。深空は彼の手を握りしめ、その暖かさを確かめていた。

「…平気」

 小さな声で彼女が答えると、雄二はいっそう握る手に力を込めた。

 "俺が守る"

 彼の声が聞こえた気がした。

 深空は小さくうなずき、麓のお堂を目指し石段を昇りつづけていた。