「じゃぁ、深雪は…?」

 雄二は首を振った。

「お前と再会した夜、あいつから電話かかって来たよな?」

 深空は黙ってうなずいた。

「あいつは、知ってたんだ。俺がお前の家にいたことを。携帯のGPS機能で…」

 雄二は吐き捨てるように言った。

「監視されてたってこと?」

「あぁ」

 ハンドルを強く握りしめ、彼はさらにアクセルを踏む。

「お前と別れた後、家に戻った俺は、親友に話を聞いてもらってたんだ。翠は、親友につれられて再会したんだ。翠は元々知っていた。高校の時の同級生だし、陽菜の親友だったからな。話を聞いてもらっているうちに、翠に告白された。高校時代から、ずっと好きだったってな…」

 深空は黙って聞いていた。彼は続けた。

「…俺はお前のことを引きずってたし、結婚はしないつもりだった。でも、あいつはそれでも、俺が心を開くまで待ってくれると言ってくれた。兄貴に相談したら、結婚して、お袋を安心させてやれって…。俺は翠と結婚した。でもな…」

 彼は赤信号のタイミングでタバコを取り出して火を付けると、開けた窓に向かって、煙を吐いた。情けなく自嘲気味に笑う雄二を見て、深空に吐露した翠の気持ちは嘘ではないことを彼女は確信した。