再び深空のまぶたに光りが射したのは、あれから数分後のことであった。

 白い蛍光灯の光を受けた天井に、まるで思い当たることが浮かばず、深空は今、自分がどこで寝ているのかさえも解らなかった。不意に視界に入ってくる男の顔。その男と目が合うと、彼女は思わず視線を逸らした。

「気付かれたようです」

 彼女の顔を覗き込んでいた駅員が、彼の背後で控えている男達にそう告げていた。

(……?)

 何のことなのか、頭の回転が鈍くなっている深空には、よく解らなかった。

「大丈夫ですか」

 さっきの駅員とは違い、声を掛けてきた初老の駅員は、顔に刻まれているシワが人生の経験を物語っていた。

 胸のネームプレートを見ると、"駅長 平山"と書かれていた。

 深空はうなずきながら、急に体を起こそうとするが、彼はそれを制止した。

「今、警察を呼んでますから。まだ休んで頂いていて構いませんよ」

 駅長は優しい笑みを浮かべて彼女に言った。

「あの、ここは…?」

 恐る恐る尋ねると、「駅の医務室です」と彼が丁寧に答える。深空は瞬きをしながら、何故自分が医務室に運ばれたのかを考えていた。

(…!!)

 眉をひそめ、その経緯を思い出した彼女は目を見張った。

「もう大丈夫ですよ。落ち着いてくださいね」

 彼は、さっきの恐怖を思い出した彼女に語りかけるように優しく宥めていた。