「…じゃぁ、この間の夜のことも聞いているんでしょうね… あたしのこと、殴りにでも来たんですか」

 深空がそう言うと、翠は首を振った。

「あなたと彼の関係を知った上で私は彼と結婚したの。彼は、あなたのこと、
忘れたりはしていない…」

 そう言って翠は、物憂気な顔を見せて小さく笑った。

「…ごめんなさい」

 深空は、正座した膝の上で拳を握りしめながら、謝っていた。

「あたしはあの時、自信が無かった。今思えば、自分の気持ちさえしっかりしていれば、あんな結論を出させずに済んだのに…」

 深空の肩は、震えていた。