「あの、どちら様でしょうか…?」

 ドアの前に立っているのは、細身でショートカットの女性だった。深空は、目を細めながらそのモニタをじっと見つめている。

(…なんかの勧誘? こんな夕飯時に?)

『あの…っ、突然押しかけてごめんなさい。私、大村と申します。主人のことでお話が…』

 少しためらいがちに話す女性に、深空の動きが止まった。

(…い、今、何て)

『…お話、させていただけませんか』

 口調こそ下手に出ている感じではあったが、意を決した覚悟を感じた深空は
、そのまま白い顔をして固唾を飲み込んだ。そしてドアに向かう。

 静かにドアを開けると、モニタには映らなかった、目鼻立ちのしっかりとした意思の強そうな女性が目の前に立っていた。

「初めまして。私、大村翠といいます。折り入ってお話したいことがあるんです。今、よろしいですか」

 深空はそう話す翠の顔を眺めていた。

 強い視線で何かを訴えようとする翠の目…

 深空はその強さに、思わず視線を逸らしてしまった。俯いた彼女は、小さな声で「どうぞ」と声を掛け、翠を中に招き入れたのだった。