いつのまにか、彼女は懐かしいあの頃を思い出していた。しかし、すぐに思い出が胸を締め付け、ご飯が進まない。深空は、すぐに箸を置いてしまった。そんな様子を見ていた雄二は、食べる手を止めた。

「…ごめん。飯まで食わしてもらっちゃって」

 下を向いている深空に、雄二は謝った。しかし、深空は首を横に振り、笑顔を浮かべる。

「…今日は、どうしたの。こっちのほうに用事でもあった?」

 深空が尋ねると、雄二は「友達と会う約束しててさ」と答えた。

 その時、彼の指が照明の光でキラリと光る。

「…結婚、したのね」

 深空は、雄二の左薬指にはまっているリングに目をやり、笑いながら箸を持った。