深空はキッチンの前に立ち、夕飯の支度を始めていた。

 先に夕飯を済ませた深雪は、隣の部屋に敷いた布団で、スヤスヤと寝息を立てて眠っている。そして、深空のすぐ後ろには、居心地の悪そうに座る、雄二がいた。

「簡単な物しかできなくて…」

 深空は、豚肉の生姜焼きを乗せたお皿を雄二の前に出すと、すぐに戸棚からお椀を出して、みそ汁を付けた。

 生姜焼きの甘辛い薫りが、食欲をそそる。彼女から箸を受け取ると、雄二はすぐに生姜焼きに手を付けた。

 深空は炊き立てのご飯を雄二に渡すと、自分も夕飯を食べる準備を始めた。

「うまい」

 雄二が一言そう言うと、緊張していた深空に笑顔が戻っていた。

 ガツガツと食べる雄二をしばらく眺めていた深空だったが、彼女も夕飯を食べ始める。