(終わっちゃった…)

 ヨロヨロと転びそうになりながら階段を降りていく、深空…

 まるで空っぽの彼女には、もう何の感情も残っていなかった。もう涙すらも出てこない。廃人同然だった。



 恋って何だっけ?
 愛って何だっけ?



 いつだかに抱いた疑問が、ポンと頭の中に浮かんでいた。今までには有り得なかった"本気"を出した、その代償は大きかったのは間違いない。視線は落ち着かず、心臓のとどろきは半端なかった。

 もう、どこに向かえばいいのかも彼女には解らない。

(…これはもう、死ぬしかないのかな)

 そう思った瞬間、彼女は笑った。

(もう誰も真剣に止めてくれる人は、いないんだもの。それも、アリか…)

 彼女の足取りは、いつの間にか軽くなっていた。

(失うものなんて、もう何もない…)

 そう思えば思うほど、深空の口元は緩んでいく。