相変わらず、エアコンのグォーーーっというモーター音が唸るほど寒い部屋…

 その部屋の中で、悲痛に満ちた彼の声が静かに響き渡っていた。

 徐々に深空の頭に浸透していくが、それと同時に思考はもう停止していた。ただ機械のように目に溜まる涙を流し、見開いた目は瞬きもせず、そのまま開いたままだった。

「…深空」

 雄二はテーブル越しに彼女を抱きしめようとした。しかし、彼の手は彼女の肩に触れることをためらったのだ。

「…ごめん」

 頭を下げる彼の姿を、ただ眺めるしかできない深空は、揺れている目の前のことに反応することなどできるはずがなかった。

 何をどう言い表したらいいか、解らない。

(…もう、ダメなの)

 深空は状況を悟り、ぽつり、頭の中でつぶやいてみる。



 どこで、歯車が狂ってしまったのだろう…?



 深空は、目を閉じて今までのふたりのことを思い巡らせていた。

 きっかけは、とても些細なこと…

 そう、とても些細な……