その瞬間、自然と自分が昔に抱いていた想いや、経験を思い出す。

 例え、彼女が陽菜の遺品のことを知らなかったとしても、いずれこうなっていたか…?

 そう考えた瞬間、彼の頭の中に一筋の光が貫いた。

(彼女には、まだ進むべき道があるのではないか…?)

 彼の中で、たくさんの葛藤が交差していたが、彼は、ふと顔を微かに上げて深空の顔を見つめる。その表情が、次第に生気が失われていくのを深空にも解った。

「先生…?」

 眉間にシワを寄せて考え込む雄二に、眉をひそめながら呼び掛ける。

 彼は、あるひとつの結論に達していた。

「…別れよう」

 目も合わさずに、雄二は言った。すると、深空の顔がみるみると紅潮していった。

「え……?」

 彼女は、耳を疑った。

 この人は、何を…?

 深空の目は見開き、彼の言った言葉の意味を必死に理解しようとしていた。

「俺と一緒に帰っても、お前が心から笑えなくちゃ、意味ねぇだろ… "好きだから"の一言で、お前を縛り付けることはできない… 別れよう」