LOVE GAME〜あたしの帰る場所〜

「お袋に病気が見つかったんだ。…もう手遅れな状況で、後が長くないっていう診断だったんだ…　だから俺は…　お前を連れていきたかったんだ」

　雄二の、深空の両腕を掴む力が強くなる。

「そ…　そう。だから…」

　深空の脳裏には、あの冷静沈着で優しい笑顔を浮かべた節子の顔が浮かんでいた。

「昨日の朝かかってきた電話は、兄貴からお袋の検査の結果を知らせる電話だったんだ」

　彼の言葉に、彼女の肩は次第に震え出す。

「なんでそんな大事なこと…」

　雄二は目を伏せ、小さく息を吐いた。

「…言えねぇだろ、そんな事実を突き付けて、強制はしたくなかった。黙ってついて来てくれるなら、言うのは向こうに行ってからでもいいだろうって思ってたから…　だけど…」

　雄二は、ふたりを挟んだガラステーブルの中程まで身を乗り出し、深空の両腕を掴んだ。

「今のお前は自分の意志を閉じ込めて、本当の気持ちを言わない…　なんで本心を隠すんだよ？！」

「言わなくちゃ、解ってくれないの？！　…じゃぁ、あたしが横浜で二人で暮らしたいって言ったら、そうしてくれる？」

　深空の眼差しはとても強かった。彼女の勢いは止まらない。

「あなたの中に、そんな選択肢はすでにないんでしょ？　お父さんの死や、お母さんの病気を理由に、懐かしかったときを過ごしたいだけ。思い出に、浸りたいだけ…」

「…何を…っ」

　動揺しつつも、雄二はそれが深空の本音だと確信していた。