平日の夜のファミレスは、夕飯時が終わるのを境に、まったりとした時間が流れはじめる。店の時計は、11時を指していた。

 更衣室で汗でベタつく肌を拭き、ひらひらのエプロンをつけた制服から私服に着替えているのは、深空だった。

(そろそろ学校のレポートの提出期限だな…)

 そんなことを考えながら更衣室を出ると、先に着替えを済ませた夏美が、彼女に声をかけた。

「じゃ、帰ろっか」

「うん」

 二人は、まだ仕事をしている同僚の彼等に挨拶をして、揃って店の外に出た。

 その時を見計らうように、深空の携帯が鳴り出す。しかし、深空はそれを無視していた。

「出ないの? 鳴ってるよ、電話」

 不思議そうな顔をして、夏美は携帯の着信音が聞こえるかばんを指差した。

「いいの、いいの。どーせ、伸夫だし」

 面倒臭そうな顔をして手を振る深空は、店の前の横断歩道が赤であることに気づき、止まる。夏美も、深空の横に並んだ。