部屋に戻ると、彼は無心に深空を力いっぱい抱きしめていた。久し振りの彼の胸に、思わず彼女もしがみついていた。彼の大きな手の平で彼女の小さな顔を包み込み、呼吸が乱れてしまうほどキスをする。そして寂しさを埋めるように、彼は深空を求めていた。

 彼女の白い肌が赤く染め上げられる―

 久しぶりに触れるお互いの身体から、温もりを与え合う。

 それは言葉を交わすよりも簡単で、何よりも温かい。今の彼等は、言葉よりも本能を信じていた。

 あのままふたりは、眠っていた。疲れた体を癒すように…

 目を開けたのは、それから三時間ほど経った後だった。

 厚い雲に覆われた空は、夕方になるとすぐに薄暗くなる。そこから空がすっ
かり暗くなるのは、あっという間だ。

 先に目を覚ました深空がベッドを降り、そんな空の様子を窓辺から眺めていた。

 振り向くと、雄二も目を覚ましていた。

「ねぇ、お腹すかない? 夕飯、どうしようか」

 深空が彼に声をかけると、彼は上を見て考える。

「簡単なものでいいから、深空の作ったものを食いたい」

 雄二は照れもせず、ストレートにそう言ったのだ。逆に、彼女が照れていた。
「あ… わかった。じゃあ、何か作る」

 脱いだ服を手に取り、着ながら深空は答えた。少し、顔を赤くしている。