ふたりは新幹線から在来線に乗り換え、部屋に帰るその道程で交わした言葉は、少なかった。それでも彼等は手を繋ぐ。やはり、繋いだ手は温かかった。そして言葉以上の優しさがあった。こうするだけで、人は安心することができるのだ。

「深空」

 不意に雄二は、彼女の名を呼ぶ。

「ん?」

 彼女は彼の顔を覗き込むようにして見た。

「…お前が居てくれて、良かった」

 彼は、とても小さな声で言ったのだ。しかし、彼女にそれでは充分だった。深空は、深くうなずいた。