横浜の天気は、雲が厚くどんよりとしていた。あと数分で、予定の時間になろうとしている。午後12時20分着の新幹線に、雄二は乗っているはずだ。

 やがて新幹線が到着するというアナウンスが駅のホームに入り、転落防止用のホームドアが次々に閉まっていく。ホームの空気の流れが変わり、空中に風が集まっていた。その風が一気に弾けた時、ホームには銀色のボディの新幹線
が、滑り込んできた。

 深空の心は落ち着かず、とてもソワソワしていた。

 早く、彼の顔を見たい…

 ホームドアがゆっくりと開くと、新幹線のドアが開いた。するとそのドアの向こうから順番に、降りる人の列ができた。深空は、その様子をドキドキしながら見つめていた。やがて、知っている顔が見えると、感激のあまり泣きそうになる。しかしなんとか踏ん張って涙を抑えると、口をきゅっと結んだ。

「おかえり」

 雄二が深空の前に立つと、彼女はしっかりと彼の目を見つめ、静かにそう言った。そんな深空に、彼は微かな笑みを含ませ、うなずきながら「ただいま」と口にした。