「…しっかりしなさいよ。あんたが彼を包んであげなきゃ」

 逸子はそう言いながら、深空の前に湯気のたった野菜スープを置いた。

 辺りにはコンソメのいい香りが広がり、深空の鼻孔をくすぐった。

「いい匂い…」

 その香りにつられ、深空はスプーンを握り、細かく角切りにされた野菜をすくう。そしてそれをふぅふぅしながら、口に運んだ。

「…おいし」

 目の前のスープを見つめ、深空はもう一口、もう一口と、どんどん口に運んでいく。

 そんな深空の様子を、逸子はキッチンに寄り掛かりながら眺めていた。その顔には、深空を見守る優しさが表れていた。