電気も付けず、窓から射す月明かりだけが、部屋の中を細く照らしていた。

 一つのベッドの上に、ふたり…

 あれからふたりは、失った時間を取り戻すかのように濃い時間を過ごしていた。

 お互いを求め合い、温もりを共有しながら眠る…

 気付いたら、もうそんな時間になっていた。

 深空は、彼の力強い腕を枕にし、窓からはっきりと見える月を眺めていた。

「…ここで一緒に住もうか」

 タバコをくわえ、細く長い煙を吐きながら、雄二が切り出した。

「ちょっと狭いけどな」

 雄二はそう付け加え、笑った。

 しかし深空は激しく首を振り、答える。

「…もう、離れたくないよ…」

 深空は雄二の胸にひしっとしがみついてみせる。

「決まりだな」

 灰皿に火の付いたタバコを置いて、彼はそんな深空に頬擦りした。

「次の休みに、車を借りて荷物を運ぶか」

「うん」

 深空の顔に、笑顔が咲いた。

「そうだ。3学期と春休みの間に、実家に帰えろう」

「わかった」

 深空は幸せを噛み締めながら、うなずいた。

(今度こそ…)

 ゆっくりと息を吐く、深空…

(今度こそ、大丈夫だよね…?)

 そして、深空は雲のない夜空に浮き出る月をまた眺めていた。