雄二の部屋のベッドで、幸せな顔で眠る深空を優しく眺める、雄二。彼は、そっと自分の胸に手を当てて、考えていた。

 彼の中にいた、もう一つの声…

 記憶に鍵をかけられ、閉じ込められていたその声が、必死になって表にいる彼に問い掛ける。しかし、その問い掛けは頭痛やめまいとして現れ、何も知らない彼を苦しめていた。

 この部屋でエンゲージリングを見付けたとき、いくつかあった鍵のひとつが壊れた。

 この若い少女が、自分にとってどれだけ重要なのか、そのリングを眺めながら、また襲いくる頭痛に耐えながら、その問いの答えを探していた。

 すると、体が勝手に動いたのだ。

 あのリングを彼女に渡さなければならないんだ、と…

 彼女を救ってあげられるのは、自分しかいないんだと、別の自分が訴えていたのを微かに聞こえてきたのだ。

 そして彼女の体に触れたとき、鍵が完全に壊れ、本当の自分が彼女を逃がさぬよう、必死に愛していた。

 記憶の底無し沼から抜け出せた彼は、クリスマスの惨劇から今までの自分の罪を償うように、彼女の中指にはまっていたリングを外し、あのリングを彼女の薬指にはめた…

 彼女がすり抜けて行こうとしても、すぐに捕まえられるように、と……