「…謝んなくていいよ。今のあなたとあたしとの間に、繋ぐものはもう何もないんだから…」

 お腹をさすりながら、彼女は言った。とても悲しげな笑みを浮かべて…

「それって…」

 雄二が尋ねると、深空はうなずいた。

「昨日、急にお腹が痛くなっちゃって、トイレに入ったらすごい血が出て…。多分流産しちゃったんだと思う」

 その事実を聞いた雄二は、深空の顔を見つめ、絶句していた。

「あたしは、あなたが記憶を取り戻す手伝いをしたかった。でも、早く思い出さなきゃって、プレッシャーを与えてたんじゃないかとも思ってた。無理に思い出そうとすると、良くないって病院の先生が良くないって言ってたし。だから、いい機会なのかもしれないね」

「深空…」

「でも、、これは必要ないから、いらない」

 深空は雄二に封筒を突き返し、立ち上がる。

「あたしは引越しの手伝いも、お見送りもできないけど、体には気をつけて」

 深空は立ち上がり、彼のアパート静かに出て行った。涙は、彼女の頬を濡らす。それでもそれを気付かないフリをして、彼女は去って行った。