「どこに行って来たんですか?」

 わざと明るく振る舞う、深空。節子は嬉しそうに、買ったものを冷蔵庫にしまっていた。

「内緒よね」

 ウフフと含みのある笑いで、節子が答えると、深空は苦笑いを浮かべた。

「ケーキ買ってきたの。あとで一緒に食べましょ」

 節子は、ケーキの入った箱の中身を深空に見せてから、冷蔵庫にしまう。

「はい」

 返事をして、深空は雄二の方を見た。

 彼はベッドサイドに座り、パソコンの雑誌を読んでいた。

「あ…」

 深空が小さな声をあげると、雄二は顔をあげた。

「その雑誌…」

 深空は、雄二が手にしている雑誌を指差した。

「あぁ、これ? さっき出かけたときに本屋に寄って買ったんだ」

「そっか。先生がよく読んでたヤツだよ、それ」

 深空がそう言うと、彼は雑誌の表紙をじっと見つめた。

「……」

「…なんか、思い出した?」

 深空が彼の向かいに膝を付いて、下から彼の顔を覗き込む。しかし、雄二は眉間にシワを寄せて首を横に振った。さらに彼は、目を閉じ目頭を指で押さえた。

「疲れたなら、少し横になって休んだら」

 深空は彼から離れ、節子が洗濯機から洗濯物を取り出しているのを見て、その手伝いにはいった。