微妙な空気が流れ、お互いに言葉を探していると、それを察知したかのように、節子が彼等に背を向けたまま口を開いた。

「深空さん、ちょっとそこまで行って、お醤油買ってきてくれるかしら。ちょっと足りなくて…」

「あ、はい」

 深空がコートを着ようとすると、雄二がすっくと立ち上がりる。

「僕が…」

 すると、節子は笑みを浮かべて彼を制止した。

「母さんは、深空さんにお願いしたのよ」

 すると彼は小さく頷き、またソファに腰を沈めた。

「1リットルのでいいですか」

「えぇ。お願いね」

 笑顔で頼む節子に、深空は同じように微笑んでそれに応えた。そして靴を履き、彼女は出かけて行った。