雄二の仕事も二学期が終わり、すぐに冬季講習が始まる。学期の時の出勤時間は、だいたい午後の一時くらいからだったが、講習が始まると、朝の十時から授業が始まるため、遅くても九時には出勤しなければならない。いつもと生活リズムが違うため、毎度のことながら、慣らすのに苦戦する。それでも、"守るもの"を得た彼にとって、くだらない弱音を吐くわけにもいかない。いつもより、高いテンションで、講習に望んでいた。



 そして、クリスマスイブ当日―

 今年のイヴは、金曜日。講習会前半が終わる日でもある。

 お昼頃、深空は雄二のアパートの前にやって来たのだった。手には、材料を買い込んだスーパーの買物袋。そして、肩にかけたかばんには、雄二へのクリスマスプレゼントを忍ばせていた。

 深空はかばんから彼の部屋の合い鍵を出し、鍵穴に差し込んだ。ロックが解除される感触を得た後、彼女は静かにドアを開けた。

 誰もいない彼の部屋―

 この部屋で、数時間とはいえ一人で過ごすのは初めてだった。彼女は、部屋の隅にかばんとコートを置き、改めて部屋全体を見渡してみる。

 主のいない部屋は、寂しさを醸し出していた。

(…さて)

 そんな雰囲気を掻き消すように、持ってきたエプロンをつけて腕まくりをするが、シンクの中を見て、深空は少しだけげんなりした。

(…まずは洗い物からか)

 気を取り直し、食器洗い用のスポンジに洗剤を付けて、まずはシンクの中に溜まっている皿などの片付けから入る。それでも深空の顔は、笑みであふれていた。