中絶をやめて、きちんと検診に通い出してからはや2週間。お腹の子は、妊娠12週目に入ったところだった。

 医師に言わせれば、順調―

 エコーで撮った写真を受け取り、病院からもらった小さなアルバムに、その写真を収める。

 まだ豆のように小さな体の中で、せわしなくうごめく心臓を動画で見る度に、ヒトの神秘を感ぜずにはいられない。

 これが今まで抱いたことのない"愛"ならば、この"愛"というものは、深空の気持ちを穏やかにし、優しくする。その反面、自分に与えてもらえるこの"愛"がなくなってしまったら… と考えてしまう自分もいる。

 深空にとって、生涯失いたくないものができてしまったのだ。
 
 では、それを守るには…?
 
 深空の中にある"答え"は、漠然とした何かが見え隠れするだけで、まだ形になっていない。そんな感情が芽生えはじめた深空は、少しずつ、変わろうとしていた。