深空に気付いた逸子は、「あら、久し振りね」と言う。深空はつい強い眼差しを向けてしまう。いつもの癖だった。

「…話、あるんだけど」

「あら、なぁに? 改まっちゃって」

「会ってほしい人がいるの…」

 深空は、雄二をリビングに通した。

 雄二の姿を見た逸子は、驚いて固まっている。

「初めまして。大村雄二と申します」

 雄二は、逸子の脇に立ちお辞儀した。すると逸子も、慌てて立ち上がり驚きの顔のまま、雄二につられて頭を下げた。

「ちょっとー、なんなの?」

 逸子はリビングのドアの前に立っている深空に尋ねる。その顔は、驚きから困惑に変わっていた。

「あたし達、結婚します」

 深空の口調は、逸子に言い聞かすように、はっきりゆっくりだった。逸子の顔は困惑からまた驚きに変化した。