「別に、いいのに…」

 深空は、隣で少しだけ緊張の面持ちで顎のあたりを触る雄二に言った。

「いいわけねぇだろ。こーゆーことは、形が大事なんだよ」

 「よしっ」と、気合いを入れて門の柄に手をかけようとする雄二。深空は眉をひそめながらその前に立ち、先に門の向こうへと入っていった。

「もう出かけちゃってて、いるか判らないし…」

 深空はそう言いながら、家のドアを開けた。
玄関に入ると、何足かの靴が並んでいる。

(…めずらし)

 その中の一足を見て、深空はそう思った。

 そのまま彼女だけ中に入り、リビングのドアを開ける。すると、リビングのソファに座り、パジャマのままテレビを見ている深空の母、逸子【ハヤコ】がいた。