その瞬間―

 深空の鼓動は、とても早く打ち付けていた。そして、心はとてもフワフワしていて、彼女は息をするのも大変だった。目は大きく開き、つい鼻で大きく息を吸い、手は震えている。どうしたらいいのか判らず、深空は固まっていた。

 アイシテル…
 あいしてる…
 愛してる……

 深空の頭の中をぐるぐると巡っている。

「愛してる…?」

 深空は、小さくつぶやいた。そのつぶやきは、冬の柔らかい光の中に漂い、散っていった。

「うん」

 しっかりと雄二が答えると、深空は何度も何度も繰り反す。

「この子も…」

 雄二は、深空のお腹に優しく触れる。

「ちゃんと愛せるように、頑張ろうな…」

 彼のそのひとことは、いつまでも深空の胸の中で響いていた。