「…それにしても」

 雄二がタバコの火を点けながら、切り出す。

「月日ってのはー… 残酷だな…」

 彼のしみじみと言うセリフに、時間差で深空は爆笑した。

「何言ってんの?」

「お前はどんどん大人っぽくなってくけど、俺はどんどんオッサンになってくんだぞ。お前を見てスゲー痛感させられたわ」

 雄二はため息をつくように、煙を吐いた。

「高校のころと変わったったかな、あたし」

 そう言って、深空は無邪気に笑って見せた。

 その瞬間、彼女は見逃さなかった。

 雄二の目が、彼女の知ってるものではなかったことを。

 そう―

 先日、本屋で偶然再会した時に感じたあの違和感。

(この人は、あたしを"かつての教え子"ではなくて、"女"を見る目で見てる…)

 彼女の"女の勘"が、そう分析した。