LOVE GAME〜あたしの帰る場所〜

 彼女の名は、陽菜【ヒナ】といった。

 陽菜の両親は、彼女がこどもの頃に事後で亡くなり、伯父、伯母である雄二の両親の元に引き取られ、雄二と二つ上の兄、敬吾とともに兄弟のように育てられた。

 雄二は同い年の陽菜に、いつも助けられていた。そしてそんな素直でひたむきな性格の彼女に、いつの間にか特別な感情を持つようになる。陽菜も雄二と同じ気持ちを持っていた。二人はやがて兄弟の絆から、恋人としての絆を深めていくようになったのだ。

 雄二の父、正雄は下請のネジ工場を経営していた。兄の敬吾は正雄の工場を継ぐために、父とともに働いていたのだった。

 一方、大学を卒業した雄二の就職先は、地元を遠く離れた横浜に決まった。また、陽菜は高校卒業から、正雄の工場で事務として働いており、雄二だけが家を出ることになった。

 その際、陽菜は雄二に付いていきたいと懇願した。しかし雄二は、初めての土地で、また初めての環境で二人が一緒に暮らすことは難しいのではないかと難色を示した。

「準備が整ったら、必ず迎えに行くから、待っててくれ」

 彼のその言葉でなだめられ、陽菜は正雄の工場で働きながら彼を見送った。