「よく来たな。」

「お邪魔しまーす…」

 入ってすぐ左側にある、こぢんまりとした受付カウンターを通り過ぎると、すぐそこはオープンスペースになっていた。そこには、講師用のデスクが4、5台置いてあり、書類だのテキストだのプリンターだの電話だの… とにかくごちゃごちゃと置いてある。男の職場丸出しだ。

 さらにまわりを見渡すと、教室が三つ。しかも深空が習っていた時よりもだいぶ小さい教室がたったの三つしかない。

「小さ…」

 深空は思わずそう声に出していた。

「ま、それだけ、少子化ってことなんだよ。ほら、テキトーに座って」

 雄二は笑いながら空いている講師用の席を勧めた。

「ふーん… あ、これ、お土産。みなさんでどーぞ」

 乗換駅で買ってきたシュークリームの箱を彼女は彼に差し出した。

「おっ、気が利くじゃん♪ ごちそうさん」

 彼はは嬉しそうにそれを受け取ると、箱ごと一人暮らし用の小さな冷蔵庫にシュークリームをしまった。

 お菓子を冷蔵庫に入れたついでに缶コーヒーを2本取りだし、彼はそのうちの1本を深空に渡した。

「あ、ありがと」

 さっそく詮を開け缶に口を付けた深空は、初めて来たこの空間ないで多少の緊張をしている自分を落ち着かせていた。