「アレン!!」




美しい白の衣を風になびかせながら、剣を持って俺達に駆けてくるレイア

その姿を見て、ドクリと心臓が鳴る




「来るなっ!! レイア!!」




しかし、遅かった




その言葉を発した瞬間、目の前にいたゼファーが風の様に駆けていく姿を見る



そして、小さな悲鳴と共に世界が沈黙へと落ちる





「さぁ。どうする? 王子?」





血走った瞳を細めてケラケラ笑うゼファー

その手に持っていた剣を、白く細い彼女の首元にかけながら




「レイア!!!」




後ろから羽交い絞めにされたレイアに向かって叫ぶ

微かに動こうとしたレイアだが、すぐに首元にある剣に当たって動きを止めた




「彼女を離せ! ゼファー!!」

「おやおや、これは驚いた。神の子と謳われた竜族の王子も、光の国の王女に恋をしていたとは」



俺の声を聞いただけで、俺達の関係を察したゼファーが面白そうに俺達を交互に見る

血走った瞳で顔を歪めるレイアを覗き込んだ



「愛する者を目の前で失った時のお前の顔、さぞかし見物だろう」

「やめろっ!!」

「――それにしても、美しい女だ。伝説の月の一族の姫君」



そう言って、汚らしい顔をレイアに近づけて

その頬を舌で舐めたゼファー



「やめろっ!!」

「ははははっ!! 所詮、お前もただの男だったってわけか!」

「レイアを離せ!」

「アレン!!!」